イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2011/09/18 02:31
EUの著作隣接権保護期間、50年から70年へ
先週拙ブログで取り上げたEUの著作隣接権保護期間の延長ですが(URL)、今週月曜、欧州連合理事会がこれを承認、録音物に対する著作権の保護期間が現行の50年から70年に延長されることになりました。来年1月1日までに、委員会は保護期間延長実現に向けたレポートを提出することになっており、報道によれば2014年の施行を目指しているとのことです。

この保護期間延長案の内容を知るのに1番良い方法は、(他の法律絡みのニュースがそうであるように)原文を読むことだと思います。その原文は、下記の欧州委員会のウェブサイトで読むことが出来ます。その下の記事はBillboard.bizのものですが、本件の背景から実際の指令の内容まですっきりまとめられた良記事なので合わせて紹介しておきます。

Term of protection - European Commission (last accessed on 17/9/2011)
EU Extends Copyright Term To 70 Years - Billboard.biz (12/9/2011)

今回の指令の主なポイントは3つ:

(1)録音物の著作権保護期間を50年から70年に延長
指令の中で、パフォーマーは一般的に若くしてそのキャリアを始めるが故、現行の50年という期間では、パフォーマーがその一生を終えるまでの期間を通して自らの著作物を保護することが出来ない、と説明されています。そのため、晩年(≒著作権保護期間終了後)に大きな収入差が発生する他、自身の著作物が好ましくない使われ方をされるのを生涯を通じて防いだり制限することが出来ません。指令では、これが保護期間延長が必要である理由と説明されています。

(2)"use it or lose it"
このフレーズを直訳すると“使うかなくすか”。レコーディング済みの未発表曲について、後に発表するか否かを決められるのは、権利上、ミュージシャンではなく、録音物の権利を所有する(主に)レーベルが持っています。今回の指令は、作品として発表しない場合はその権利をパフォーマーに返還すべきであるとしています。

(3)セッション・ミュージシャンへの救済策
前払金やセールスに応じた印税収入のあるパフォーマーとは異なり、セッション・ミュージシャンのように決まった額の報酬を1度だけ受け取るディールを結び作品に参加するミュージシャンがいます。このようなミュージシャンも保護期間延長の恩恵を受けられるように、彼らに対する救済策が盛り込まれました。これにより、延長される20年の保護期間中に最低年1回、その作品のあげた収益の20%が彼らセッション・ミュージシャンに支払われます。


ちなみに、(2)と(3)については2009年の段階で保護期間延長案に盛り込まれていたものです。

今回の承認された保護期間延長案の内容は、確かに当初に比べれば、(2)や(3)が盛り込まれたことで幾分改善されていますが、パフォーマーにとって、特に今を働き盛りの比較的若いパフォーマにとって、果たして保護期間延長が本当にベネフィットになるのか、かなり疑問が残ります。3年近く前になりますが、まだグラスゴーにいた頃に見た「How copyright extension in sound recordings actually works」というビデオがあります。Open Rights Groupが作成したもので、当時拙ブログでも取り上げました(URL)。このビデオの中で、延長期間(補足:当時の延長案は50→95年)で新たに得られる収益のうち、90%はレコード会社へ、9%は対象アーティストの上位20%へ、1%がその他80%のアーティストへと配分されると紹介されています。つまり、大多数のミュージシャンには延長によって増える利益はほとんどないのです。詳しくは追記をご覧下さい。また、保護期間は延びますが、パフォーマー自らが権利をコントロール出来るようになるわけではありません。録音物に関しては、基本的に変わらずパフォーマーから権利を移譲されたレーベルが握ることになります。これについては、契約の段階で権利を手放してしまったパフォーマーの過失という見方も出来ますが、どちらにせよ、今回はほとんど話題になりませんでしたが、市民がより作品にアクセスしやすい環境を作り出すためにも、個人的には保護期間延長を好ましくは見ていません。

この件についてはheatwave_p2pさんの下記の記事をオススメします。延長することで恩恵を与えたいのは、本来なら引退して収入が年金以外はないはずの人達なのか、今まさに音楽活動をしている人達なのか、を考えて読まれると良いと思います:

欧州委員会、著作隣接権保護期間延長の提案を採決 - P2Pとかその辺のお話(20/7/2008)

最後に、関連記事をいくつか貼っておきます。参考までにどうぞ。

<ニュース記事>
Rock veterans win copyright fight - BBC News (12/9/2011)
※最後の方2006年のThe Gowers Review以降の著作隣接権延長に至るまでの経緯がよくまとまっています。

<各団体およびアーティストの反応、コメントなど>
Copyright term extension is a cultural disaster - Open Rights Group (12/9/2011)
EU copyright directive: Everybody comments - CMU Daily (13/9/2011)

※追記(21/9)
FAC statement on EU Copyright Extension - Featured Artists Coalition (19/9/2011)

FACのステートメントを読みながら、"clean slate"について触れるのを忘れていたことに気付きまして、ここで少し補足します。

"clean slate"が組み込まれた指令の部分ですが、これは50年間でリクープできなかった前払金を回収不能と見なし、延長される20年間はレーベルの控除なしにパフォーマーが本来受け取れるはずの印税を満額受け取ることが出来るというものです。実は、上記でまとめた指令の(3)も、ほぼ控除されずに収益の20%を受け取れるということで、延長される20年間のパフォーマーの経済的な待遇は向上すると考えて良いと思います。

ただ、結局その前の50年間の状況はそう変わるわけではない。例えば、普通に考えると、20才でデビューしたら70才までは変わらない。繰り返しになりますが、経済的な面での著作権は、生きているミュージシャンを助けたいのか、引退して年金を受け取っている元ミュージシャンを助けるためにあるのか。70才以上の元ミュージシャンが90才まで収入を得られることを喜ぶべきなのか否か、FACのステートメントを読んでいると疑問です。

また、これは是非とも主張したいのですが、文化や教育の観点から見た場合、果たして70年という保護期間は適当なのかどうかについては、もう少し議論が活発になっても良いはずです。まぁ、学者の書いた多くのレポートがある部分で既にないがしろにされている時点で、教育や文化の側にいる人間の主張は半分切り捨てられたようなものなのかもしれませんが・・・。
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2011/09/11 02:22
著作隣接権保護期間、70年へ(again)
SOUND RECORDING COPYRIGHT EXTENSION COULD BE PASSED IMMINENTLY - CMU Daily (8/9/2011)
Europe to extend performer copyrights - FT.com (8/9/2011)
Victory for Cliff's law - BBC News

7日、EUの常任委員会は,録音に係る著作権(copyright in sound recordings)を現行の50年から70年に引き上げる案に対する投票を行い、賛成多数で可決されました。来週、閣僚らによる承認を経て、正式に法案成立となります。著作隣接権保護期間の延長は長きに渡り検討されていたもの。今年6月にその議論が再燃した際、ここ2年の経緯について拙ブログでまとめました:

(前略)話は2009年に遡ります。保護期間延長は元々長く議論されてきた問題の1つで、一時は現行の保護期間50年からアメリカと同じ95年への延長で話が進んでいました。しかし、イギリスが圧力団体などからの批判を受け、70年への延長でのみ合意する姿勢を示したことなどから、現行の著作権保護期間を50年から70年に延長する法案で欧州委員会と欧州議会は通過。しかしながら、今度は閣僚会議に到達したところで法案反対を表明していた国の存在や延長する年数、内容等で議論が行き詰まり、話がストップしてしまいます。結局、期日までに話が詰められなかったことから、著作権保護期間延長についてはアジェンダから外されてしまいました。
-- 欧州にて著作権保護期間延長の議論が再燃 - Green Sound from Glasgow(13/4/2011)


そして、6月に再びメディアで取り沙汰されたEU域内の著作隣接権保護期間延長が、今回再度“延長ほぼ決定”ということで報道されているわけです。ただ、今の時点ではメディアのピックアップが限定的なので、メディアでの本格的な議論は来週以降になるのかもしれません。現時点で面白い点をついているなと思ったのは、BBC Newsの「閣僚達が(保護期間延長に賛成すると同時に)、実はHargreaves Reviewを認めている」という指摘。Hargreaves Reviewについては拙ブログのこちらでも取り上げています。閣僚達が保護期間延長に疑問を呈したHargreaves Reviewを認めつつ、実際のところ延長に向けて賛成票を投じているならば、矛盾した行為と指摘されて当然のことかと思います。ただ、この“Reviewを認めつつ”のソースが見つけられないので、実際どんな風に承認しているのかは分かりかねるのですが・・・。

The Beatlesを始めとして、2年後の2013年以降、60年代のヒット作が相次いで著作隣接権の保護期間から外れることもあり、今後議論はますます加熱していくかと思います。ひとまず、来週また動きがありそうなので、その時改めて考えたいと思います。
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2011/09/02 15:27
“Termination rights”を取り巻く問題について
この記事は、前回の記事「"termination clause"の影響とEMI売却話」(1/9/2011)の続きになります。この記事の中で、アメリカの著作権法“The Copyright Act of 1976”により、同国内で1978年1月1日以降にリリースされた作品について、著作者の申し立てにより原盤権が著作者に返還されると定めた消滅条項(“termination clause”)と、これがEMI売却やレーベルの投資家に与えうる影響についてざっくりと紹介しました。

今回は、この条項と所謂"termination rights"(終了権)に関連して、原盤権の返還について弁護士のSteve Gordon氏がまとめたDigital Music Newsの下記の記事をまとめてみます。私自身は法律の専門家ではないので、甘い点などあるかと思いますが、その時はご指摘頂けると有り難いです。Digital Music Newsの元記事と、消滅条項に関するニュースが世界を駆け巡るきっかけとなったNew York Timesの記事は下記の通り:

The Comprehensive Guide to Reclaiming Your Old Masters... - Digital Music News (29/8/2011)
Record Industry Braces for Artists’ Battles Over Song Rights - New York Times (15/8/2011)

現行のアメリカの著作権法と、その日本語訳を掲載しているウェブサイトはこちら:
Copyright Law of the United States - U.S. Copyright Office (last accessed on 3/9/2011)
KSL著作権情報館 - カネダ著作権事務所 (last accessed on 3/9/2011)※該当ページはroom#5です。


■何故、レーベルにとってバックカタログが大切なのか?
・伝統的なレコード契約では、レーベルがアーティストに印税を払うのは、アーティストがリクープ(レーベルが肩代わりしていたプロダクションやマーケティングのコストを完済する)した後。そのため、たとえアーティストがその作品から返済するに足りる収入を得ていなくとも、レーベルは利益を得られる仕組みになっている。
・違法DLや音楽配信を好む若いリスナーと比べ、お金がありフィジカル音源を好む年齢層の高いファンは、バックカタログの購買層にあたる。そのため、レコード・セールスが落ち続けている中、レーベルはバックカタログのセールスに頼らざるを得ない。

■終了権について(US著作権法、section 203)
・この権利は、著者(音楽であれば所謂アーティスト、実演家)が、レコード会社などに移譲していた自身の録音物に係る権利の返還を要求できるというもの。
・権利の付与は1978年1月1日以降に製作された作品で(a)リリースから35年後 (b)契約から40年後 のうち早く時期が来る方に行われる((b)は今回は割愛)
・先のThe Copyrithg Act ot 1976が1978年1月1日に施行されているため、最初の返還は2013年から行われる事となる。
・返還要求は、期限の10年前から行うことが出来、遅くても2年前には申し立てを行わなければならない。そのため、1978年にリリースされた作品については、今年中に申し立てなければならない。
(※section 203の原文はこちら

■問題点(1):終了権は職務著作物("work for hire"または“work made for hire")には適用されない
・一般的に多くの契約書には“work for hire”と記載されているが、この著作権法下においては職務著作物と見なされない可能性がある。レーベルは、管轄裁判所が作品を職務著作物と見なさなかった場合、アーティストが原盤権を含む全ての権利をレーベルに譲渡するとする付帯条項を入れ込むことで、リスクを分散化させている。しかし、The Copyright Act of 1976下においては、これが権利の“移譲”にあたると見なされ、消滅条項が適用される可能性がある。

◇職務著作物について
・定義(US著作権法、section 101)
(1)雇用の範囲で被雇用者によって作られた作品(訳注:この場合、雇用主であるレーベルが作品の著者になる)
or
(2)次のような使用のために特別に依頼された作品で、当事者間で文書にサインし、同意を得られているもの:集合著作物への寄与;映画やAV作品;翻訳;補助作業;コンピレーション;教科書;テスト;テストの解答用教材;地図帳。

◇録音物は職務著作物にあたるか?
・レーベルは、(2)を用いて“コンピレーションとして集合著作物への寄与=アルバム”と見なし、職務著作物であると主張する可能性がある。(※US著作権法上の定義はこちら
・(2)については、1999年、RIAA(全米レコード協会)が、"AV作品"の後に"録音物(as a sound recordings)"を追加するよう議会に働きかけ、法案“'Satellite Home Viewer Improvement Act of 1999”の修正条項に入れ込むことに成功した背景がある。同法案は国会を通過、これにより、"work for hire"を示す文言の入った契約書でサインしたアーティストに対しては、作品は職務著作物であると確実に説明出来るはずであった。しかし、同法案はそもそもTVシグナルの再送信に関する法案で、RIAAがギリギリになってそっと忍び込ませた修正条項であった。これにミュージシャンや学者が反発、結局この条項は無効となった。レーベルはこの経緯を持ち込み、(2)として見なされうると主張出来るが、そもそも録音物は(2)に入っていなかったのだから(そして最終的には無効となった条項なのだから(※追記9/5))(2)にあたらない、と見なされる可能性もある。
・(2)ではなく(1)を採用する場合、コモンローのエージェンシー法が適用され、レーベル&アーティストが雇用&被雇用の関係にあり、作品を完成させるプロセスに雇用主のコントロールがあったかどうかが焦点となる。結論としては“No”で、レーベルがアーティストのレコーディングに対してコントロールは持っていないと見なされる可能性が高い。また、そもそも雇用&被雇用という同意は両者間で成されていないと思われる。

■問題点(2):作品の著者が二人以上である可能性がある
・権利の返還を求める際、その作品が一人で作られたのか、それ以上なのかが大きなポイントとなるため、返還要求や裁判に入る前に明確にしておくべき問題である。

◇プロデューサー
・プロデューサーは、制作過程において不可欠な存在であり、労務契約を結んで作品に参加しているが故、“共同制作者”と見なされる可能性がある。

◇エンジニア、セッションミュージシャン
・被雇用者と十分に見なされる場合が多い故に、著者にはあたらない。

■今後の展開
・法廷での争いを避け、新たなディールを結ぶ道を探るケースが多いのではないかとの予想がある。
・裁判に持ち込むことに積極的なレーベルもあるが、アーティストの中には交渉に応じず断固として権利返還を要求してくる場合もあるかもしれず、レーベルにとっては難しい交渉となりそうである。
・新たな法律を成立させて解決に導こうという動きがある。民主党John Conyers Jr.議員はその一人。詳細は下記の記事にて:

Legislator Calls for Clarifying Copyright Law - New York Times (29/8/2011)


前回のブログで、「果たして本当にアーティストの申請が通るのかは、実はちょっとした議論になっています」と書いたのですが、Gordon氏の説明を読む限り、私個人は、録音物の権利返還は行われる、もしくはアーティストに有利な形で交渉が進むと考えています。レーベルとアーティストの契約は、そもそも雇用&被雇用というよりビジネス・パートナーといった感じで結ばれてきたものだと思うので、Gordon氏の説明にあるように、職務著作物の(1)で説明するのは難しい。ただし、(2)に関しては、解釈が難しく、ケース・バイ・ケースになっていくのかな、と。Gordon氏の言うとおりならば、そもそも"work for hire"と書かれている契約書の元作られた作品が“work for hire”にあたらないかもしれないというのがおかしい気もしますが・・・。となると、やはり政府からクリアーな基準を出してもらうのが1番いいのではないかと思います。

Digital Music Newsの記事の前書きに“Just remember: your label doesn't want you reading this!(忘れないで:あなたのレーベルはこれを読んでもらいたくない!)”あるのですが、そう言いたくなるのもよく分かります。と言うのも、今も活動を続ける大物ミュージシャンで優秀な弁護士がついているならともかく、このニュースを聞くまで消滅条項のことを何にも知らなかったアーティスト(及び死亡したアーティストの遺族)も多かったのではないかと思うからです。Gordon氏の解説は非常に分かりやすく、ここでは省きましたが記事の最後には実際返還要求するためのステップまで説明されているので、“知らなかった”アーティストに“知られて”しまうと、レーベルとしては確かに嫌かもなぁ、と。

これは、日本のミュージシャン及びその他音楽関係者にとっても他人事ではないと思います。権利や法律の問題に無関心にならず、自分が結んでいる(もしくはこれから結ぶ)契約内容は本当にフェアなのか、心に留めておくべき法律はあるのかどうか、アーティストはレーベルやマネージメント等に任せっきりにしていないか、等々常に考え、行動していく必要があるのではないでしょうか。アーティストに限って言えば、“アーティストが音楽活動に集中するために、法務的な部分は他人に任せる”という考え方もありますが、そうであれば尚更、自分が信頼出来る人に信頼出来る内容で任せるために、アーティスト自身も勉強する必要があります。「知らなかった」では話になりません。

少し長くなってしまいましたが、このブログを書きながら私自身も良い勉強になりました。ご意見、アドヴァイス、ご指摘あれば是非コメント頂ければと思います。
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2011/09/01 00:18
"termination clause"の影響とEMI売却話
既報ですが、アメリカの著作権法“Copyright Act of 1976”にある、レーベルなどが保有している原盤権が所定の手続きを踏むことでアーティストに戻ってくるという条項“termination clause”(消滅条項)の存在が話題になりました。ロッキング・オン社のウェブサイト、RO69でもこんな感じで取り上げられています:

1978年リリースの作品のマスター音源がすべてレコード会社からアーティストに強制返還? - RO69 (16/8/2011)

かなりざっくり説明すると、この条項は、アメリカ国内で1978年1月1日以降にリリースされた作品について、リリースから35年経つと原盤権がアーティストに戻されるというもの。アーティストがこの権利を行使するには、2年前までに権利の返還を申し立てなければなりません。1978年リリース作品の権利返還には、この申し立てを今年中に行う必要があり、既にボブ・ディランやトム・ウェイツが申請中とのことでニュースになったと言うわけです。Billboard.bizによれば、今年上半期のアルバム・セールスの49%、単曲セールスの60%がバックカタログものということで(こちらを参照)、バックカタログは(特にメジャー・)レーベルにとって大事な収入源。後述しますが、もしも申請が通れば、今後レーベルにとっても大損失となります。

これ自体とても重大なニュースなのですが、今日、下記のニュース記事を読んでいたら、どうもこれは単に「年を追う事に権利がアーティストに戻ってレーベルが大損失」というレベルの話ではない気がしてきました。

Sources: EMI Valuation Is Suddenly Under Attack... - Digital Music News (30/8/2011)

ご存じの方も多い通り、Citigroupが現在、傘下にあるEMI Musicの売却に向けて動いており、複数の企業が名乗りを上げていると報じられています。そのEMIと言えば、ザ・ビートルズをはじめとした大物アーティストのバックカタログを多数保有するレーベル。しかし、EMIの投資者の一人がDigital Music Newsに対して以下のように語っています:

“If EMI were sold ten years ago, it wouldn't have made a difference," one investor told Digital Music News. "Now, it's a factor, and [investors] will be going back to look at every piece of catalog [in their assessments].”
(“もしEMIが10年前に売られていたら、重要なことではなかったかもしれない。”ある投資家はDigital Music Newsに語った。“しかし今それは重要なファクターで、(投資家たちは)アセスメントの際にカタログの一つ一つをチェックすることになるだろう”)


また、Digital Music Newsの同記事の冒頭はこのように始まります:

"Citigroup is apparently very motivated to dump EMI Music, considered a seized 'toxic asset' in certain circles."
(サークル内を占拠する‘不良資産’を考慮すれば、Citigroupは恐らくEMI Musicを売り出すことに非常に前向きなのではないだろうか。)


これらのコメントは、消滅条項の存在がレーベルの未来を左右するかもしれないという状態の今、売りに出されているEMIに向けられている投資家達やその取り巻きの目が変わりつつあることを表しているのだと思います。もちろん、レコード・セールスの世界的な下落といった要因もありますが、プラスして、貴重な財産(=バックカタログ)がどんどん手元から離れていく(かもしれない)レーベルに誰が投資するのか?誰が買うのか?そんなクエスチョンが、少なくても一部の間では回り始めていることを示しているのではないでしょうか。これはEMIだけでなく、バックカタログでビジネスを回している多くのレーベルにとっても他人事ではない話です。

では、果たして本当にアーティストの申請が通るのかは、実はちょっとした議論になっています。この件については、このブログ記事では非常にざっくりとしか説明出来なかったので、自分の勉強の意味も含めて次回もう1度取り上げたいと思います。下記は、次回取り上げようと思っているDigital Music Newsの消滅条項に関するガイド記事ですが、音楽業界を専門とする弁護士、Steve Gordon氏によって非常に分かりやすく解説されています。是非ご一読頂きたいので、先に紹介しておきます。長い英文ですが、お時間ある方は是非。

The Comprehensive Guide to Reclaiming Your Old Masters... - Digital Music News (29/8/2011)
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2011/08/27 21:12
イギリス政府、知的財産に関する政策の改革案を発表
1ヶ月半近くブログのお休みをもらいまして、ご無沙汰しております。夏の行事も一段落しましたので、大分出遅れましたがこちらのニュースを取り上げます。

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イギリス政府は今月、知的財産に関する政策の改革案を発表しました。これは、今年5月、政府の依頼を受けてIan Hargreave氏が書き上げた通称“The Hargreaves Review” (正式には『Digital Opportunity -A review of Intellectual Property and Growth』)』を受けて発表されたもの。The Hargreaves Reviewの内容については以前拙ブログで紹介しましたが、その中で、paidContent:UKがまとめた、レビューでなされた主な提案についての部分を再度引用します:

- Create a Digital Copyright Exchange
(Digital Copyright Exchangeの設置)
- Enable automatic licensing of orphan works
(著作権者不明の作品に対して自動的なライセンス契約を可能にさせる)
- Decriminalise format shifting
(フォーマット・シフティングの非犯罪化)
- No U.S.-style Fair Use
(USスタイルのフェア・ユースは採用しない)
- Back EU’s cross-border licensing drive
(EU圏内における国を超えたライセンスを認める動きを支持する)
- Use EU copyright exceptions on format shifting, parody, non-commercial research, and library archiving.
(フォーマット・シフティング、パロディ、非営利の研究、図書館のアーカイブに対して、EUの著作権の例外を適用する)
- Build flexibility in to the system
(柔軟性をシステムに組み込む)

●source: UK Digital IP Review Wants Easier Licensing, Format-Shifting, No Fair Use - paidContent:UK (18/5/2011)
●参考: The Hargreaves Review発表 - Green Sound from Glasgow (22/5/2011)


これに対して、"Goverment response"として発表されたのがこの度の改革案になります。原文はこちらから落とせます。この中から、音楽関連の部分について、上記のポイントを考慮しながらまとめたのが下記になります:

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■Digital Copyright Exchange(DCE)の設置について
・DCEは、権利情報を一元的に管理し、権利者やライセンスを得たい企業や個人間でより容易なやりとりを可能にさせることで、市場の活性化を狙うもの。Hargreaves reviewでは“相互運用可能なデータベースのネットワーク”と説明されている。
・現在、多くのライセンサー達がそれぞれの権利情報のデータベースを持っており、利用目的に応じてクリアーな課金が行われているものの、ライセンシーがある行為にかかる権利を迅速にまとめて支払いまで完了させるメカニズムにまでは至っていない(例えば、ライセンシーが、ステージパフォーマンスやミュージカルのレコーディングしたいコミュニティ・グループや、そういった録音されたもののクリップ映像をインターネットにアップする場合など)。また、総合的でアクセスしやすい権利関係の情報ソースも集合的に提供されてはいない。しかし、こういった情報ソースは、意図的に行われる著作権侵害をより咎め、罪なき著作権侵害を減らす可能性を含むものである。
・大小の権利所有者がより迅速且つより煩わしさのない取引で権利の売買を行えるようにすることは、イギリスにとっても当然有益と考えられる(レビューでは、2020年までに、DCEの国内での経済効果は年間22億ポンドに達するとされている)。
【政府提案】
・政府は、2011年末までに進捗状況報告書をまとめ、2012年までには業界関係者を集めてフレームワーク作りに着手したい意向である。

■EU圏内における国を超えたライセンスについて
・EU内で著作権を一元管理し、プロセスの簡素化や効率化を計ろうとする試みは、既にEUレベルでは行われている。これにより、小規模もしくは新しいビジネスのマーケットへの参入を促したり、権利者や消費者等へのベネフィットにも繋がると考えられている。
【政府提案】
・現在欧州委員会が指揮を執って進めているEU圏内での国境を越えたライセンスのフレームワーク作りを引き続き支持する。
・イギリス政府は、国内の関係者及び欧州委員会と共に、関連する多様な産業が持つ現行の効率的なライセンス・モデルと互換性のある提案を発展させていく。

■権利者不明の作品(Orphan Works)について
・政府は、著作権者不明の作品を使われないままにしておくのは誰のベネフィットにもならないとの認識を共有している。これは、文化的にだけでなく、経済的にも大きな問題であると認識している。
【政府提案】
・今秋に著作権者不明の作品の商的及び文化的使用を許可するスキームの提案をまとめる予定である。また、著作権者不明の作品を受け入れたセクターに恩恵をもたらすべく、広がりのある集合ライセンスに関する提案も行う。これにより、小規模及び個人のクリエーター達にもたらしうる最大限のベネフィットを探っていく。

■著作権管理団体の役割について
・著作権管理団体の会員からは透明性やガバナンスまで、著作物のオペレーションに対する懸念が挙げられている。また、ライセンスを受ける側からは、著作物の使用にかかる課金の実践に置いて、高圧的で、誤解を招きかねない、もしくは不公平な実践が行われているとの懸念が寄せられている。
・EUが現在共通の基準を設けようと試みている。イギリスはそれを支持し、またリードしていくのであれば、それに相応しい実例を示す必要がある。
【政府提案】
・政府は2012年始めには、最低限の自主的な行動規範を発表することにしている。また、それらの実施に向けて著作権管理団体とも協議する。また、法的行動規範が実践されるための補強策も提案する。これは、著作権管理団体が最低限の基準を具体化させる自主的な行動規範が遵守されなかった時のためである。

■著作権の例外(copyright exceptions)について
イギリスの現行法では、所謂フォーマット・シフティング(例えば、オリジナルとなるCDからPCにリップする行為)は違法であるが、音楽業界は黙認しており、フォーマット・シフティングの合法化が叫ばれてきた。また、著作権の例外の適用範囲について制限が強いという意見もあり(学術研究や図書館のアーカイブなど)、Hargreaves Review内でも、フェア・ディーリングの在り方が問われていた。
【政府提案】
・EUによる枠組みの範囲で、より幅広い著作権の例外の適用を促すことがイギリスにとって有益であるとする、レビューの主張を支持する。その上で、2011年秋までに、著作権の例外の新たなレジーム案を発表する。これには、限定的な私的複製、非商業ベースのリサーチや図書館のアーカイブに対するより幅広い例外の適用、パロディに対する例外の適用が含まれる。

■より柔軟性のあるシステムの構築について
【政府提案】
・EUレベルでより幅広い著作権の例外を適用する必要があるというレビューの指摘に同意する。
・イギリス政府は、リサーチ用のデータをの使用を含む新しいテクノロジーのより広い受容を可能とする、EUレベルでの更なるフレキシビリティを保証するべく邁進する。

======

今回の政府発表に関してのニュースでは、日本でも海外でもフォーマット・シフティングが大きなトピックとして取り上げられていましたが、実際はHargreave Review発表当時大変話題になったDCEや、フェア・ディーリングに対する前向きな言及があり、どのトピックも今後の動向が非常に気になる内容になっています。

今回、関係団体及び個人の意見を吸い上げて、有識者がレポートをまとめて、それに基づいて政府が再度回答するという流れが、非常に上手く機能している気がします。政府回答にもある、“根拠に基づく政策作り”がなされようとしているのかな、と。2006年のGowers Reviewの際は、レビューでなされた提案があまり採用されなかった背景もあり、今回、政府がHargreave Reviewを支持する姿勢を示したのは、非常に素晴らしいことだと思います。

最後に、各団体の反応が読めるウェブページを紹介しておきます。興味のある方はどうぞ。

Copyright reform: round-up of reactions - The Telegraph (3/8/2011)
UK govt to respond to Hargreaves review today, but music biz gets reaction in early - Music Ally (3/8/2011)
UK Music reinforces its commitment to working with Government to ensure the UK’s creative sector has the right framework for growth - UK Music official website (3/8/2011)
A welcome response to the Hargreaves Review - Open Rights Group (3/8/2011)
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プロフィール

anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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