イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2011/08/27 21:12
イギリス政府、知的財産に関する政策の改革案を発表
1ヶ月半近くブログのお休みをもらいまして、ご無沙汰しております。夏の行事も一段落しましたので、大分出遅れましたがこちらのニュースを取り上げます。

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イギリス政府は今月、知的財産に関する政策の改革案を発表しました。これは、今年5月、政府の依頼を受けてIan Hargreave氏が書き上げた通称“The Hargreaves Review” (正式には『Digital Opportunity -A review of Intellectual Property and Growth』)』を受けて発表されたもの。The Hargreaves Reviewの内容については以前拙ブログで紹介しましたが、その中で、paidContent:UKがまとめた、レビューでなされた主な提案についての部分を再度引用します:

- Create a Digital Copyright Exchange
(Digital Copyright Exchangeの設置)
- Enable automatic licensing of orphan works
(著作権者不明の作品に対して自動的なライセンス契約を可能にさせる)
- Decriminalise format shifting
(フォーマット・シフティングの非犯罪化)
- No U.S.-style Fair Use
(USスタイルのフェア・ユースは採用しない)
- Back EU’s cross-border licensing drive
(EU圏内における国を超えたライセンスを認める動きを支持する)
- Use EU copyright exceptions on format shifting, parody, non-commercial research, and library archiving.
(フォーマット・シフティング、パロディ、非営利の研究、図書館のアーカイブに対して、EUの著作権の例外を適用する)
- Build flexibility in to the system
(柔軟性をシステムに組み込む)

●source: UK Digital IP Review Wants Easier Licensing, Format-Shifting, No Fair Use - paidContent:UK (18/5/2011)
●参考: The Hargreaves Review発表 - Green Sound from Glasgow (22/5/2011)


これに対して、"Goverment response"として発表されたのがこの度の改革案になります。原文はこちらから落とせます。この中から、音楽関連の部分について、上記のポイントを考慮しながらまとめたのが下記になります:

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■Digital Copyright Exchange(DCE)の設置について
・DCEは、権利情報を一元的に管理し、権利者やライセンスを得たい企業や個人間でより容易なやりとりを可能にさせることで、市場の活性化を狙うもの。Hargreaves reviewでは“相互運用可能なデータベースのネットワーク”と説明されている。
・現在、多くのライセンサー達がそれぞれの権利情報のデータベースを持っており、利用目的に応じてクリアーな課金が行われているものの、ライセンシーがある行為にかかる権利を迅速にまとめて支払いまで完了させるメカニズムにまでは至っていない(例えば、ライセンシーが、ステージパフォーマンスやミュージカルのレコーディングしたいコミュニティ・グループや、そういった録音されたもののクリップ映像をインターネットにアップする場合など)。また、総合的でアクセスしやすい権利関係の情報ソースも集合的に提供されてはいない。しかし、こういった情報ソースは、意図的に行われる著作権侵害をより咎め、罪なき著作権侵害を減らす可能性を含むものである。
・大小の権利所有者がより迅速且つより煩わしさのない取引で権利の売買を行えるようにすることは、イギリスにとっても当然有益と考えられる(レビューでは、2020年までに、DCEの国内での経済効果は年間22億ポンドに達するとされている)。
【政府提案】
・政府は、2011年末までに進捗状況報告書をまとめ、2012年までには業界関係者を集めてフレームワーク作りに着手したい意向である。

■EU圏内における国を超えたライセンスについて
・EU内で著作権を一元管理し、プロセスの簡素化や効率化を計ろうとする試みは、既にEUレベルでは行われている。これにより、小規模もしくは新しいビジネスのマーケットへの参入を促したり、権利者や消費者等へのベネフィットにも繋がると考えられている。
【政府提案】
・現在欧州委員会が指揮を執って進めているEU圏内での国境を越えたライセンスのフレームワーク作りを引き続き支持する。
・イギリス政府は、国内の関係者及び欧州委員会と共に、関連する多様な産業が持つ現行の効率的なライセンス・モデルと互換性のある提案を発展させていく。

■権利者不明の作品(Orphan Works)について
・政府は、著作権者不明の作品を使われないままにしておくのは誰のベネフィットにもならないとの認識を共有している。これは、文化的にだけでなく、経済的にも大きな問題であると認識している。
【政府提案】
・今秋に著作権者不明の作品の商的及び文化的使用を許可するスキームの提案をまとめる予定である。また、著作権者不明の作品を受け入れたセクターに恩恵をもたらすべく、広がりのある集合ライセンスに関する提案も行う。これにより、小規模及び個人のクリエーター達にもたらしうる最大限のベネフィットを探っていく。

■著作権管理団体の役割について
・著作権管理団体の会員からは透明性やガバナンスまで、著作物のオペレーションに対する懸念が挙げられている。また、ライセンスを受ける側からは、著作物の使用にかかる課金の実践に置いて、高圧的で、誤解を招きかねない、もしくは不公平な実践が行われているとの懸念が寄せられている。
・EUが現在共通の基準を設けようと試みている。イギリスはそれを支持し、またリードしていくのであれば、それに相応しい実例を示す必要がある。
【政府提案】
・政府は2012年始めには、最低限の自主的な行動規範を発表することにしている。また、それらの実施に向けて著作権管理団体とも協議する。また、法的行動規範が実践されるための補強策も提案する。これは、著作権管理団体が最低限の基準を具体化させる自主的な行動規範が遵守されなかった時のためである。

■著作権の例外(copyright exceptions)について
イギリスの現行法では、所謂フォーマット・シフティング(例えば、オリジナルとなるCDからPCにリップする行為)は違法であるが、音楽業界は黙認しており、フォーマット・シフティングの合法化が叫ばれてきた。また、著作権の例外の適用範囲について制限が強いという意見もあり(学術研究や図書館のアーカイブなど)、Hargreaves Review内でも、フェア・ディーリングの在り方が問われていた。
【政府提案】
・EUによる枠組みの範囲で、より幅広い著作権の例外の適用を促すことがイギリスにとって有益であるとする、レビューの主張を支持する。その上で、2011年秋までに、著作権の例外の新たなレジーム案を発表する。これには、限定的な私的複製、非商業ベースのリサーチや図書館のアーカイブに対するより幅広い例外の適用、パロディに対する例外の適用が含まれる。

■より柔軟性のあるシステムの構築について
【政府提案】
・EUレベルでより幅広い著作権の例外を適用する必要があるというレビューの指摘に同意する。
・イギリス政府は、リサーチ用のデータをの使用を含む新しいテクノロジーのより広い受容を可能とする、EUレベルでの更なるフレキシビリティを保証するべく邁進する。

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今回の政府発表に関してのニュースでは、日本でも海外でもフォーマット・シフティングが大きなトピックとして取り上げられていましたが、実際はHargreave Review発表当時大変話題になったDCEや、フェア・ディーリングに対する前向きな言及があり、どのトピックも今後の動向が非常に気になる内容になっています。

今回、関係団体及び個人の意見を吸い上げて、有識者がレポートをまとめて、それに基づいて政府が再度回答するという流れが、非常に上手く機能している気がします。政府回答にもある、“根拠に基づく政策作り”がなされようとしているのかな、と。2006年のGowers Reviewの際は、レビューでなされた提案があまり採用されなかった背景もあり、今回、政府がHargreave Reviewを支持する姿勢を示したのは、非常に素晴らしいことだと思います。

最後に、各団体の反応が読めるウェブページを紹介しておきます。興味のある方はどうぞ。

Copyright reform: round-up of reactions - The Telegraph (3/8/2011)
UK govt to respond to Hargreaves review today, but music biz gets reaction in early - Music Ally (3/8/2011)
UK Music reinforces its commitment to working with Government to ensure the UK’s creative sector has the right framework for growth - UK Music official website (3/8/2011)
A welcome response to the Hargreaves Review - Open Rights Group (3/8/2011)
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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