イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2009/08/18 01:14
"Who can make the live music industry go green?"
修論のタイトルは"Who Can Make the Live Music Industry Go Green?: An Analysis of the Green Movement in Live Music(誰がライブ産業をエコにできる?ライブミュージックにおけるエコ・ムーブメントの分析)"。最初はフェスに焦点をあてつつリサーチするつもりでしたが、インタビュー素材が集まった時点で、このアプローチはナシになり、もっと全体的にライブ産業を見ていくことになりました。

学術論文が影響力を持つのは博士レベルであって、修士レベルというのは、学部生の卒業論文にちょっと箔がついた程度のもの。私の書いたものもその程度のものでしかありません。全然偉くない。でも、面白いリサーチが出来たという自信はある。私自身が何より楽しかったし。

ポイントをいくつかまとめます。「続きを読む」からどうぞ。

論文では、音楽業界内の環境団体Julie's Bicycle(JB)と、プロモーター(=ライブ産業の代表的存在として)、そしてミュージシャンの3グループの関係について論じました。そのために、3グループを「JB vs プロモーター」「ミュージシャン(+オーディエンス)vs音楽業界(=JB+プロモーター)」に分け、ケーススタディを用いながら、比較分析を行いました。

ケーススタディは、デスクリサーチに加えて、各グループの代表となるような人達にインタビュー取材をプラス。具体的には、JBのメンバー、プロモーター(大型フェスのオーガナイザー。インターン先)、ツアープロダクション・マネージャー(某大物バンドのエコ・ツアーをデザインしたパイオニア)、ミュージシャン(カナダの比較的新しいバンド。ヨーロッパツアーを公共交通手段のみで行っている)の4名(本当は小規模フェスのオーガナイザーもインタビューさせていただく予定でしたが、結局おじゃんに。残念)。この4ケースを比較することで、上記の3グループ間のギャップがクッキリ浮かび上がりました。

主なポイントは3つ:

●経済的利点がない限り、業界は動かない。
ベーシックとして知っておく必要があるのは、レコード産業にしろライブ産業にしろ、音楽はビジネスであるということ。環境という観点から言えば、全てが全てとは言わないけど、傾向として見られるのは、「経済的メリットがあるから元々やるつもりだけど、なおかつ環境にも優しいならラッキー」という心構え。どんなにJBが色々研究しようと、ガイドを作ろうと、優先されるのは経済活動なので、それら発行物はあまり活用されない。
後、これは論文には書かなかったのだけど、経済優先だと、より狭いフレームワークの中でしか運営方針を変えることが出来ない。例えばフェスの場合、ラインナップをもっと「環境問題に意識のありそうな人達が集まるメンツ」にしないとファンの環境に対する無責任な態度の改善は見込めないけど、ラインナップを変えればファンが逃げていく可能性が高まる(例えば、サマソニのラインナップがフジみたいになったら、サマソニがサマソニたる理由がなくなる)。逆に、エコを売りにしたフェスは改善の余地がいくらでもあると言うことも出来ますが。
・・・と、その他諸々考慮しても、業界は腰が重い。JBに期待されているのは、その腰を動かすような活動なのに(e.g. 排出量を制約するためのフレームワークとか、経済的インセンティブになるものを提供するとか)、JBがやっていることは、科学的研究、過去行われてきた成功例を纏め上げたレポート等々。また、排出量を抑えるための制約は、業界全体の賛同なしには行わないと名言しているので(そんなの無理だし)、JBの現場での影響力は正直弱いのではないかと思います。JBは、業界が何を期待しているのかをもう1度しっかり見極める必要があるのではないでしょうか。

●コンサート活動で最も影響力を持っているのはミュージシャンである。
まず、このエコ・ムーブメントにミュージシャンが巻き込まれていない点を取り上げる必要があるでしょう。JBは「ミュージシャンは業界の一部」と考えている一方、プロモーターは「ミュージシャンがエコのために活動するにはスケジュールがタイトすぎる」ことを理由に、協力をお願いできないとこぼす。となると、今、ミュージシャンに働きかけている人はいるのか?という話になります。
フェスはまた少し話が違うところもあるのですが、通常のコンサート活動においては、ミュージシャンが最も大きな影響力を持ちます。週末だけライブをやるツアーをやりたい、大規模なステージセットを組みたい、フェスだけ回りたい等、要望を出すのはミュージシャンであり、その要望に答えるために動き回るのがマネージャー。そして、バンドの意向を受けて、話し合いの場に登場するのがプロモーターです(※マネージャーとプロモーターの間には、ツアーマネージャーとエージェントがいます)。バンドのキャリアによって叶う要望には幅がありますが、基本的な流れは変わりません。つまり、イニシアティブを握っているのはミュージシャンなのです(もしマネージャーがバンドに指示を出せるような立場だったなら、Radioheadと同じマネージメントであるCoutyardの他アーティストも似たようなツアーをやっていいはずなのです)。
最も良い例が、拙ブログでも散々取り上げたRadioheadです(こちらを参照)。彼らが環境負荷を抑えたツアーを実現できた最大の要因は、シンプルに、ツアープランを練り始める初期の時点で(「初期」というのが大事)、バンドが「次のツアーは、何が何でも出来るだけエコにしたい」と要望を出したから、と言って良いと思います。彼らのツアーに関しては、「エコにならなければいけないのはバンドではなくファンだ」と批判を受けていたこともありましたが(拙ブログも当時はその意見に同意していた)、実は、表面には見えないところに、バンドのロジックがしっかり働いています(このロジックについては拙ブログのこちら参照)。ファンへの影響という意味でも、ミュージシャンの影響力は絶対無視できないもののはずなのです。
となると、Radioheadや、インタビューしたカナダのバンドのように、環境に対する意識の高いミュージシャンが行動に移してくれれば、動きは一気に加速するはずです。が、ミュージシャンに対して働きかけている人が、今のところいない。極論、「業界云々さておき、家庭や学校での環境教育が重要」という話になるのでしょうが、それは音楽業界のやることではない。となると、やはり、バンドが実際の行動に移る気にさせるような何かが必要なのではないかと思います。

●政府・地方行政の積極的関与の必要性
最終的には、法的制約が1番効力をもつでしょう、と。シンプルにそんな話。

・・・と、私が論文で主張したのは、以上の3点でした。もちろん、プロモーターやコンサート会場が色んな設備やスキームを導入して、より持続可能な運営を行うことが必要ですが、今完全に無視されているミュージシャンの参与は絶対に必要だ、というのが、この論文の最大のポイントだと思います。

JBもまだ新しい団体だし、これから色々違った動きを見せてくれるとは思いますが、私個人は、ボトム・アップで、上(政府とか業界のお偉いさんとか)を動かすしかないのではないかと感じます。この前のU2の“超”環境負荷の大きいツアーに関しても、JBは一切コメントを出さなかったですし(U2所属のLive NationがJBのメンバーにいるのだから、出せるはずがない)、今のままの活動を続けていれば、彼らは批判を受けること間違いなしだと思いますが、果たしてどうでしょうか。

最後に、今回のキーとなったインタビューイーとつないで下さった方に特段の感謝を。彼のインタビューがとれなかったら、今回の修論はひどく退屈なものになっていたと思います。それから、日本からレディへの環境対策レポ in Japanをしてくれたmicaちゃん、修論の助けになりました。本当にありがとう!
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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