イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2009/09/16 21:00
ミュージシャン、次々声を上げる (追記有り)
イギリス政府の、インターネット回線一時遮断を盛り込んだ強固なパイラシー対策案に対する、イギリス音楽業界の混乱についての続報が続々入ってきて、ちょっとキリがなくなってきました。面白いのは、ミュージシャンが声を上げた瞬間、業界だけでなく、NMEのような音楽ファンのコミュニティでもこのニュースがガンガン取り上げられていること。日本にも飛び火していて、FACが最初に声を上げた時はともかくとして、まさか続報までしっかり取り上げられるとは思ってもいませんでした。業界内だけのやり取りでは何の騒ぎにもならない。ミュージシャンがメディアに持つパワーがはっきり証明された形になりましたね。

さて、事の発端は、Featured Artists Coalition(拙ブログのFACカテゴリー参照のこと)がクリエイターサイドの2団体とともに、この対策案に対して反対を表明したこと(拙ブログのこちらを参照のこと)。ざくっとまとめると、彼らの主張は、「ファンを犯罪者扱いすべきでない」「ファイル共有は昔テープで音楽をダビングして聞いていたようなもの」「新しい音楽を見つけるきっかけを作る」「パイラシーであるバンドの音楽を聞いたのをキッカケに、バンドのライブに行って、チケットやグッズを購入するという形でバンドに経済的利益をもたらす」・・・といった感じで、パイラシーは音楽文化を豊かにするのに一役買っているという考えがベースになっています。
これに対して、ミュージシャン側からこんな反応が:

リリー・アレン、レディオヘッドやP・フロイドの意見に反対 - Barks News (16/9/2009)
My Thoughts on File Sharing - Lily Allen on myspace (14/9/2009)
SOS the Global Music Industry.... Go Team Lily! - Patrick Wolf on myspace (15/9/2009)

まず、FACに反対の姿勢を示したのがリリー・アレン。そしてパトリック・ウルフも彼女のサポートに回っています。彼らの反論をざっくりまとめると、「パイラシーは新人ミュージシャンに損害をもたらし、最終的には英音楽業界を殺すことになる」というもの。彼らの意見は理解できるのですが、ちょっと的が外れていて、FACの反論にはなっていない。リリー・アレンのコメントから以下引用:

Instead you get a huge debt from your record company, which you spend years working your arse off to repay. When you manage to get a contract, all those pretty videos and posters advertising your album have to be paid for and as the artist, you have to pay for them. [...] I'm lucky that I've been successful and managed to pay it back, but not everyone's so lucky.
(ミュージシャンはレーベルから多大な借金を背負ってるの。そして、何年も働いてそれを返済しなければならない。レーベルと契約するということは、ビデオや販促用ポスターを作るためのお金をレーベルから借金して、ミュージシャンが払うということ。私は運良くその借金を返済できたわ。でも、全員がそうというわけではないの。)


つまり、明記はしていないけど、ミュージシャンは彼らの音楽作品から最大限の収入を得る必要があるが、パイラシーによるレコードセールスの下落がその収入を減らしているという意見でしょう。ただ、パイラシーとフィジカルのレコードセールスの下落との関連性がハッキリと証明されていない状況下、このような結論を結ぶことは出来ないと思います(もし何か証明できるものを知っている人がいたら、是非教えてください)。これは、Barksのライターさんも勘違いしている点(引用すると、「このレコード会社に借金云々は、アーティストやレーベル、契約によって違うだろうが、違法ダウンロードをする人が多ければ多いほど、アーティストにお金が入らないのは確か」の部分)。
また、ミュージシャンの収入を減らしている最大の要因の1つが、契約内容がレーベル有利に偏っている点であることを、このコメントは反映していない。まぁ、もう少しミュージシャンにもフェアな契約になったら、今度はレーベルが損失を被るのかもしれないけど。この点については、レーベルとの契約に焦点をおいて反論を繰り広げているFACの主張の方が、個人的には理にかなっている気がする。それから、もう1つ:

But as they start to lose big from piracy, they're not slashing their salaries - they're pulling what they invest in A&R. Lack of funds results in A&R people not being able to take risks and only signing acts they think will work, which again makes British music Cowell puppets.
(レーベルがパイラシーで損失を被るようになったから、彼らは十分なお給料を確保できなくなって、A&Rにまわしてたお金をカットせざるを得なくなった。結果、A&Rはリスクを背負ってまでバンドと契約を結ぶことが出来なくなったのよ。これが、イギリスの音楽を(Simon) Cowell(著名なイギリス人プロデューサー)のパペットにしてしまったの。)


レーベルの収入が落ちて、A&Rにお金が回らなくなった面はあると思う。ただ、さっきも書いたように、パイラシーが収入減の直接の原因なのかどうかはまだ特定できてない。それと、従来の契約方法にいろんな問題があるわけで、“リスク云々で契約できない”って、ここではどうゆう意味なんだろうか、とは思う。アルバム5枚分の契約をして、バンドを育てよう・・・みたいな話だったら、DIYでありとあらゆることが出来る現在においては、少し時代遅れな考えであるようにも思う。

でも、この点はリリーに賛同。パイラシーがなくならない最大の要因は、やっぱりここなんじゃないかと思う。以下Barksの訳を引用:

「FACは、共有ファイルはサンプラーや友達の音楽をダビングするようなものだって言ってるでしょ。でも、テープをミックスしたりラジオから録音してたのは、いまある共有ファイルとはまったく違う。ミックス・テープのクオリティは最悪だったでしょ。だから、本物の音楽を買ってたんじゃない。[...] でも、このデジタル・ワールドでは、海賊盤は買ったものと同じくらいいいクオリティなのよ。だから、それ以上いいもの買う必要なんかないじゃない」


・・・と、こんな感じに見ていくと、彼らの反論は、レコード産業だけに重きを置き過ぎている感がある。先に「FACの反論になっていない部分がある」と書いたのは、これが理由。FACの根本にあるのは「ライブ産業やマーチャンダイズがメインの収入源として移行しつつある」という最近の傾向であり、従来のレコード・ベースのビジネス・モデルを元にしたリリー達の反論は、根本で話がずれている。時間があったら取り上げたいのですが、以下の記事がとても良いので、参照していただきたい。

SONY BOSS MEETS WITH MANAGERS - CAN THEY BE PERSUADED TO BACK THREE-STRIKES? - CMU Daily (15/9/2009)

私個人、ビッグ・ネームであろうとそうでなかろうと、FACの主張するビジネス・モデルは通用するのではないかと思う。世間的には全然知名度のないフォーク・ミュージシャンやワールド・ミュージックのアーティストがどうして音楽メインで活動を続けられるか考えてみると、そう考えざるを得ないもの。リリーやパトリック・ウルフの主張は理解できるけど、個人的には、FACの方がまだ筋が通っている気がする、というのが私の今のところの結論。それに、もといFACだって、「音楽は無料で楽しめるもの」だなんて一言も言ってない。ただ、今のデジタル音楽のビジネス・モデルが持続的だとは思っていないとだけ付け加えておきます。

※追記(17/9/2009)
いつも大変お世話になっているP2Pとかその辺のお話@はてなさんにも関連記事があります。より細かな分析がなされていますので、是非参照下さい:
- Lily Allen、「FACの主張は新人アーティストにアンフェア」と批判
- 英国音楽業界、FACは新人を軽視していると批判
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FACメンバーらの発言に対しては、少なくともレコード産業に関わる人たちから、新人、スタジオミュージシャンを軽視している、という批判がある。とはいえ、その発言を支える新人アーティストからの援護射撃はそれほどないのだが(これまでレコードレーベルが大多数の新人を
【2009/09/17 00:03】 | P2Pとかその辺のお話@はてな
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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