イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2010/01/09 03:37
「In Rainbows」の実験的リリース方法がバンドにもたらした本当の気付きとは?
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
年末はニュースが何もなくなって寂しい感じでしたが、年が明けて一気に色んなニュースが入ってきました。今年もどんな出来事が起こるのか楽しみです。ひとまず、間を空けすぎていたので、まずは軽い話題から1つ。

Exclusive MIDEM inteview with Ed O'Brien from Radiohead(video interview, last accecced on 8/1/2010)
Radiohead: We Rejected Digital-Only To Reach More People - PaidContent:UK(8/1/2010)

世界最大の国際音楽産業見本市MIDEMの開催が再来週に迫ってきましたが、興味深いインタビュー動画がMIDEMのオフィシャルサイトに上がっています。これは、RadioheadのギタリストEd O'Brienに対してMIDEMが行った独占インタビューで、革新的な「Pay-what-you-like」方式で2007年にデジタル・リリースされたRadiohead7枚目のアルバム「In Rainbows」から得た教訓について語られています。MIDEMのプログラムをチェックした限りでは、1月23日のMidemNetのオープニングである“From Content to Context - Monetising the New Music Experience”というセッションの最後に放送される彼のインタビューに先立って公開されたもの推測されます。

「In Rainbows」のリリースから学んだこととして、エドはまず"It's this feeling of empowerment, it's this feeling of creativity. It completely rejuvenated us (権限を得たという感覚、創造的であるという感覚で、それは僕らを活気づけるものだったんだ)"という感覚的な話から始めていきます。これは、後に出てくる不公平感に関する問題に繋がってきます。

彼は、「当初は、デジタルのみでのリリースという考え方もあった」ことを明かしています(注:以前、彼らのマネージャーChris HuffordとBryce Edgeは、Music Weekに対して、「ウェブサイトからのDLは、その後のCDリリースに向けたプロモーションの一環」と説明しており(URL)、その辺の事実関係がどうなっているのかはよく分かりません)。しかし、バンドがデジタル・リリースのみという実験で気付いたのは、「人々はある特定の(自分が心地よく感じる)方法で音源を入手したいと思っている」こと。CDで買いたい人もいればiTunesで買いたい人もいる。BitTorrentでDLする人だって、いつもアクセスしているお気に入りのTorrent検索サイトからDLするわけで、他のサイトには行かない。つまり、実験の過程で、バンドは、消費者の多様な好みに合わせて、様々な音源入手方法を用意する必要があると感じたようです。それは、彼曰く「メジャー・レーベルが“No”と言ってることなんだけど(笑)」。

そして、話はデジタル・ミュージック積極派からよく聞かれる話へと流れていきます。バンドは、バンドとレーベルで結ばれる契約が、法的にレーベルに圧倒的有利であることが問題であると感じていたと言います。しかし、「In Rainbows」で、レーベルとバンドを結んでいたのはパートナーシップだったと説明。これが、先述した“Empowerment(権利付与)”に繋がっています。そして最後は、「僕は、アナログ時代のビジネス・モデルから脱却しなければならないと思っている。(中略)従来の(ビジネス)モデルは、僕らの生きるデジタル時代には適合しない。」との言葉でインタビューは締めくくられます。

リリースから早2年以上経った今でも、「In Rainbows」のリリース方法に関する議論はよく見かけます。アカデミックの世界でも、オーストラリアの学者がこの件に関する論文を発表しています(URL)。私も、まだまだこの件に関するニュースは好んで読んでいますが、今回のインタビューは、過去見聞きしたニュースやインタビューの中でも面白い分類に入るものだと思いました。これまで、「Pay-what-you-like」方式によるデジタル・リリースに関しては:(1)「ファン-バンドをダイレクトにつなぐビジネス・モデル」(2)レーベル無しでリリースする - の2点が主な焦点として語られていた感があります。しかし、今回エドがインタビュー中盤で語っている「音源への様々なアクセス方法の提供」というのは、語られていなかった訳ではないのですが、彼が、「例えば、お気に入りのCDショップでいつも買い物するように、Torrent検索サイトもどのサイトでも良いというわけではなく、いつも利用しているサイトからDLしたいというユーザーの消費傾向がある」と主張しているのが興味深いな、と。

この件に関して、エドは「「僕たちのウェブサイトから(新曲を)タダでダウンロード出来る」と母親に言ったら、「いや、私はそれは出来ない」と言われた」と話していますが、こういった事例からバンドが気付いたのは、「大切なのは、リスナーは自分たちが好む方法で音楽を入手し、聞きたいと思っている」ことだったのではないか、と感じました。つまり、「リスナーは音楽にお金を払う気があるのか」より「リスナーがどんな方法で音源を入手したがっているのか」について考える事の方が大事だ、と。もちろん「ファンが自分たちの作品にどれほどの価値を見いだすか試したかった」というのは、彼らを“Pay-what-you-like”方式に駆り立てた最も大きな動機の1つだったと思います。しかし、実験後(もしくは実験以前から)彼らが感じたのは、「P2PによるDLを取り除くことは出来ない」ことを前提とした上で、「リスナーが好む音源入手方法の傾向を分析し、そこからどう利益を上げるか」が真のテーマである、ということだったのではないでしょうか。

となると、よく言われてはいるのとはまた別に、Radiohead級の大物バンドでなければ不可能な壮大なマーケティング調査だなぁ・・・と改めて感心してしまう私です。こう考えれば、FACのアジェンダもより深く理解できるかな、と。

最後に、去年のMIDEMでRadioheadの共同マネージャーBrian Message氏が行ったキーノートに関する拙ブログの記事を貼っておきます。参考までに。

Midem2009続報 - Green Sound from Glasgow (21/1/2009)
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Big in Japan その2 | Home | 年末の挨拶
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コメント
初めまして。日本の大学生です。twitterの@GRAHAMCOXONの検索からたどり着きました。件の音楽の売り方にしても、単純に音楽的にも、「In Rainbows」が00~10年代の音楽のひとつの指標めいた物になっているなと、いち個人レベルですが感じています。またお邪魔します~!
【2010/02/06 11:41】 URL | kogojiten #-[ 編集]
初めまして。コメント頂きありがとうございます。
In Rainbowsに関するあれこれっていうのは、彼等がEMIを離れてどうするかってい経緯もあって、すごく注目されていただけに、みんな不意打ち食らったっていう感じでもあったとは思います。そんなこともあって、余計に時代の象徴っぽく見えるのかなと。
アルバム自体はそんな新しい感じではないです、すごく2007-2008年っぽさがあって個人的にもお気に入りです。
【2010/02/07 21:41】 URL | @yano #gPWjmAF6[ 編集]
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世界最大の国際音楽著作権見本市MIDEMの公式サイトにエドのインタヴュー映像が公開されている。インタヴューの内容は『In Rainbows』のリリース方法から得た教訓について。このインタヴューについてはGreen Sou...
【2010/01/09 12:17】 | 速報
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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