イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2010/04/04 20:13
デジタル・ミュージック・サービスの多様化進む(イギリス)
大学院時代のクラスメートとのひょんなメールのやりとりの中で、mflowというものすごいものの存在を知ってしまった。実際のところ、本当にものすごいのかどうかは知らないけど、「うわ!なんじゃこりゃ!」と正直思ってしまった。そして、改めて感じたのは、UKやUSを中心として、新たなストリーミング・サービスがどんどん生まれ、市場規模がみるみる大きくなってきていると言うこと。良い機会なので、MOGの紹介と併せて、これからの数ヶ月間話題をさらうであろうこの2つのデジタル音楽サイトについて紹介します。ちょっと長いのですが、出来れば最後まで読んでいただければと思います。

Twitter meets iTunes at mflow - Telegraph Blog by Shane Richmond (5/3/2010)
Click to download: mflow, Twitter's hipper little brother - The Guardian (1/4/2010)
4月15日に正式ローンチ予定で、現在はベータ版として運営されている、イギリスの新しいデジタル音楽サイトmflowに関するニュースです。"Twitter meets iTunes"という響きだけでも分かるとおり、かなり面白いサービスになっています:

(1)mflowをインストールします。Twitterのように、好きな人をフォローします。
(2)あなたがフォローしている人が、140文字以内のコメントと共に、お気に入りの曲やアルバムを紹介("flow")します。それらの楽曲はあなたのinboxに入ります。
(3)inboxに入った曲を、あなたはフルで聞くことが出来ます。この中に曲が沢山たまれば、ある種のラジオのようにして聞くことが出来ます。
(4)inboxから気に入った曲があれば、購入することができます(320kbps, DRM-free)。
(5)購入した曲の価格の20%は、その曲をflowした人の収益となります。逆に言えば、もしあなたをフォローする誰かが、あなたのflowした曲を購入すれば、あなたはflowした曲の価格の20%を得ることになります。
(6)あなたがflowした楽曲で得たお金は、mflow内で楽曲を購入するために利用できます(ただし、mflow以外では利用できないし、現金化もできない)。
* ちなみに、mflowでの人気曲ランキングや人気mflowユーザーランキングなんていうのもあるようです。


面白い音楽を紹介してくれる人を見つけて、フォローすれば、色んな音楽情報が手に入って、自分の趣味にあったラジオのような働きをしてくれるという点がとても魅力的。この点を考慮すると、これはSpotifyみたいなものよりも、Hype Machineのような口コミサイトの方が、mflowの影響をモロで被るように個人的には感じています。

気になるのがカタログ数ですが、mflowのウェブを見る限り、現在Sony, Universal, Beggarsグループ(4AD, XL, Matador, Beggars Banquet), PIAS, Domino・・・とDominoのロゴの上にあるレーベルロゴがどこのか分からないけどもう1レーベルが参加している模様。私の感覚では、これだけでもメジャー/インディー問わずかなりのカタログ数がカバーできるかなと思います。UKロック好き的にはEMIが欲しいところですが、破綻直前のEMIは果たして参加出来るだけの余力が残っているか微妙かもしれません。ただ、このサービスのメインターゲットとなるのは熱心な音楽ファンでしょうから、カタログの拡大 --特にインディ系 --は必須事項と言えると思います。

それからもう1つ言えるのは、これがただの試聴サイトと化さないかどうか。聞いた後に“買う”ところまで手を伸ばしてもらわないことには、このサービスは機能しないわけで、どれだけ多くの人を“購入”まで結びつけるかが大きなポイントとなりそうです。もちろん、「自分がmflowで稼いだ分だけmflowで出費できる」という利点は、「そのために人気のmflowユーザーになろう」とか「そのためにホットな曲を探そう」といった、音楽発掘へのモチベーションにもなって、凄く良いアイディアだと思う。ただ、逆に言えば、人気ユーザーにならないと音源を購入するに十分なお金を得ることが出来ない可能性も大いにあるわけで、出費する一方になったユーザーからは飽きられるかも分からない。その辺は、実際動いてみないと分からないのかなとは思います。

とはいえ、どちらにしろ、このサービスは注目度も期待度も高いと言えると思います。私も、UK Onlyとは分かりつつ、あまりに試したかったので、うっかりmflowをインストールしてしまった程。もちろんサイン・アップ出来なかったですが(涙)。正式ローンチとなる今月15日までは招待制で、TelegraphとThe Guardianにある以下のcodeでベータ版にサインアップできます。UK在住の方、是非一度おためし下さい!(そして感想教えてください/切実)

from Telegraph blog: SHANER99
from The Guardian: ZANE444(Zane Loweのもの), CLASH0403 (Clash Magazineのもの)



MOG v Spotify: the battle begins - The Guardian Blog by Helienne Lindvall (5/3/2010)
そして、こちらは少し前に話題になったニュース。購読型ストリーミング・サービスといえば、UKだったらSpotifyかWe7がメジャーどころだと思います。今最も熱いこのマーケットに、アメリカのMOGが今年6月までに進出してくる・・・とのことで、The GuardianがMOGのCEO、David Hyman氏に対するインタビューを行っています。MOGは、定額制ストリーミング・サービスで、月5ドルで聞き放題。iPhoneやアンドロイドでのサービスも含める場合は月10ドル。We7と同じく、ウェブサイトにアクセスして音楽を聞くタイプで、広告ベースではないので、CMが入ることがないとのこと。ちなみに、UKでローンチされる時は、それぞれ月5ポンドと月10ポンドのサービスになるそうで、アメリカよりちょっと割高になりますが、これはヨーロッパの出版料がアメリカのそれより高いからとのこと。

問題は、お金の流れ。Hyman氏によれば、購読料の何%か(ブログでは20%前後ではないかとなっています)が、MOGの収益に、残りはレーベルや音楽出版社に分配されるとのこと。しかし、「この後がハッキリしない」と記事が言っているとおり、他の購読型サービスとは違い、1プレイの印税額は定額制ではないようです(この辺りに関して、記事は、「カタログを提供しているSonyやUniversalが何か関わっているのではないか」と言ってます)。記事によれば、もしMOGが5ポンドの購読料から20%をとるとしたら、残りは4ポンド。この4ポンドがレーベルや出版社にどう分配されるかは、その人がどの曲を何度プレイしたかによる。以下、記事の例を参考に考えてみると:

【例】
1日40回プレイ=1月およそ1,200回の場合、1プレイ当たり0.3pがレーベルと出版社に配分される。
→0.3pのうち、作曲家に配分されるのは0.06p。
→0.3pのうち、レーベルとアーティストに配分されるのは0.24p。
→0.24pがレーベルとアーティストでどう配分されるかは、契約内容による。


お分かりのように、もし1月のプレイ回数が少なければ、1プレイ当たりの配分額が大きくなり、プレイ回数が少なければその逆が起こる。上記の例の場合、作曲家が60ポンドを得るために必要なプレイ数は、何と10万回。なかなかお金にはなりません・・・。

しかも、数多くのインディペンデント・レーベルをとりまとめるMerlinのトップ、Charles Caldas氏がMOGへの参加に消極的な姿勢を示しており(この時点では)、カタログ数という面で、SpotifyやWe7に劣るというのは大きな欠点になるかと思います。ということで、MOGもSpotifyもどっちもどっち・・・というのが結論といえそうです。
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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