イギリスの音楽産業について考えるブログ
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2011/09/18 02:31
EUの著作隣接権保護期間、50年から70年へ
先週拙ブログで取り上げたEUの著作隣接権保護期間の延長ですが(URL)、今週月曜、欧州連合理事会がこれを承認、録音物に対する著作権の保護期間が現行の50年から70年に延長されることになりました。来年1月1日までに、委員会は保護期間延長実現に向けたレポートを提出することになっており、報道によれば2014年の施行を目指しているとのことです。

この保護期間延長案の内容を知るのに1番良い方法は、(他の法律絡みのニュースがそうであるように)原文を読むことだと思います。その原文は、下記の欧州委員会のウェブサイトで読むことが出来ます。その下の記事はBillboard.bizのものですが、本件の背景から実際の指令の内容まですっきりまとめられた良記事なので合わせて紹介しておきます。

Term of protection - European Commission (last accessed on 17/9/2011)
EU Extends Copyright Term To 70 Years - Billboard.biz (12/9/2011)

今回の指令の主なポイントは3つ:

(1)録音物の著作権保護期間を50年から70年に延長
指令の中で、パフォーマーは一般的に若くしてそのキャリアを始めるが故、現行の50年という期間では、パフォーマーがその一生を終えるまでの期間を通して自らの著作物を保護することが出来ない、と説明されています。そのため、晩年(≒著作権保護期間終了後)に大きな収入差が発生する他、自身の著作物が好ましくない使われ方をされるのを生涯を通じて防いだり制限することが出来ません。指令では、これが保護期間延長が必要である理由と説明されています。

(2)"use it or lose it"
このフレーズを直訳すると“使うかなくすか”。レコーディング済みの未発表曲について、後に発表するか否かを決められるのは、権利上、ミュージシャンではなく、録音物の権利を所有する(主に)レーベルが持っています。今回の指令は、作品として発表しない場合はその権利をパフォーマーに返還すべきであるとしています。

(3)セッション・ミュージシャンへの救済策
前払金やセールスに応じた印税収入のあるパフォーマーとは異なり、セッション・ミュージシャンのように決まった額の報酬を1度だけ受け取るディールを結び作品に参加するミュージシャンがいます。このようなミュージシャンも保護期間延長の恩恵を受けられるように、彼らに対する救済策が盛り込まれました。これにより、延長される20年の保護期間中に最低年1回、その作品のあげた収益の20%が彼らセッション・ミュージシャンに支払われます。


ちなみに、(2)と(3)については2009年の段階で保護期間延長案に盛り込まれていたものです。

今回の承認された保護期間延長案の内容は、確かに当初に比べれば、(2)や(3)が盛り込まれたことで幾分改善されていますが、パフォーマーにとって、特に今を働き盛りの比較的若いパフォーマにとって、果たして保護期間延長が本当にベネフィットになるのか、かなり疑問が残ります。3年近く前になりますが、まだグラスゴーにいた頃に見た「How copyright extension in sound recordings actually works」というビデオがあります。Open Rights Groupが作成したもので、当時拙ブログでも取り上げました(URL)。このビデオの中で、延長期間(補足:当時の延長案は50→95年)で新たに得られる収益のうち、90%はレコード会社へ、9%は対象アーティストの上位20%へ、1%がその他80%のアーティストへと配分されると紹介されています。つまり、大多数のミュージシャンには延長によって増える利益はほとんどないのです。詳しくは追記をご覧下さい。また、保護期間は延びますが、パフォーマー自らが権利をコントロール出来るようになるわけではありません。録音物に関しては、基本的に変わらずパフォーマーから権利を移譲されたレーベルが握ることになります。これについては、契約の段階で権利を手放してしまったパフォーマーの過失という見方も出来ますが、どちらにせよ、今回はほとんど話題になりませんでしたが、市民がより作品にアクセスしやすい環境を作り出すためにも、個人的には保護期間延長を好ましくは見ていません。

この件についてはheatwave_p2pさんの下記の記事をオススメします。延長することで恩恵を与えたいのは、本来なら引退して収入が年金以外はないはずの人達なのか、今まさに音楽活動をしている人達なのか、を考えて読まれると良いと思います:

欧州委員会、著作隣接権保護期間延長の提案を採決 - P2Pとかその辺のお話(20/7/2008)

最後に、関連記事をいくつか貼っておきます。参考までにどうぞ。

<ニュース記事>
Rock veterans win copyright fight - BBC News (12/9/2011)
※最後の方2006年のThe Gowers Review以降の著作隣接権延長に至るまでの経緯がよくまとまっています。

<各団体およびアーティストの反応、コメントなど>
Copyright term extension is a cultural disaster - Open Rights Group (12/9/2011)
EU copyright directive: Everybody comments - CMU Daily (13/9/2011)

※追記(21/9)
FAC statement on EU Copyright Extension - Featured Artists Coalition (19/9/2011)

FACのステートメントを読みながら、"clean slate"について触れるのを忘れていたことに気付きまして、ここで少し補足します。

"clean slate"が組み込まれた指令の部分ですが、これは50年間でリクープできなかった前払金を回収不能と見なし、延長される20年間はレーベルの控除なしにパフォーマーが本来受け取れるはずの印税を満額受け取ることが出来るというものです。実は、上記でまとめた指令の(3)も、ほぼ控除されずに収益の20%を受け取れるということで、延長される20年間のパフォーマーの経済的な待遇は向上すると考えて良いと思います。

ただ、結局その前の50年間の状況はそう変わるわけではない。例えば、普通に考えると、20才でデビューしたら70才までは変わらない。繰り返しになりますが、経済的な面での著作権は、生きているミュージシャンを助けたいのか、引退して年金を受け取っている元ミュージシャンを助けるためにあるのか。70才以上の元ミュージシャンが90才まで収入を得られることを喜ぶべきなのか否か、FACのステートメントを読んでいると疑問です。

また、これは是非とも主張したいのですが、文化や教育の観点から見た場合、果たして70年という保護期間は適当なのかどうかについては、もう少し議論が活発になっても良いはずです。まぁ、学者の書いた多くのレポートがある部分で既にないがしろにされている時点で、教育や文化の側にいる人間の主張は半分切り捨てられたようなものなのかもしれませんが・・・。
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anno69(@yano)

  • Author:anno69(@yano)
  • イギリスの音楽産業、特にデジタル・ミュージックと音楽産業における環境問題対策に関するブログ。スコットランド大学院留学記も。
    管理人は、スコットランドのグラスゴー大学大学院ポピュラー音楽学コースを修了し、帰国。音楽好きの普通の会社員をしています。お問い合わせは cielo0818_ls [at] hotmail.com までお気軽にどうぞ。
    A blog dedicated to topics of the UK music market in particular digital music, copyright and environmentalism in pop music.

    ●Twitter:http://twitter.com/anno69
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