上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。 新しい記事を書く事で広告が消せます。
以前このブログでも紹介した(「予告」24/7/2008)英音楽業界の環境問題対策を取り扱う団体「Julie's Bicycle」の、今年4月に発表した「英音楽業界温暖化効果ガス排出量レポート(First Step UK Music Industry Greenhouse Gas Emissions for 2007)」をようやく読破しました。70ページに及ぶこのレポートはイギリス音楽業界全体での温暖化効果ガス排出に関わる初めてのレポートとのことで、読む価値十分です。様々な業界の組み合わせで成り立っている音楽業界という性質やデータ不足などで、100%正確な結果になっているわけではありませんが、調査したのがオックスフォード大学なのでなかなか信頼できるかなと個人的には思っています。
で、これをまとめようというのは私の実力では無理なので、英語が読める方は要約レポート(Excutive summary・英語)をご覧ください。以下、個人的に気になった点をいくつかピックアップします。
★音楽業界自体は重工業などと比べればGHG排出量の少ない業界と言える。しかしながら、音楽が我々の生活に与える影響は大きく、GHG排出量削減のリーダーとして、我々にインパクトを与える役目を果たすべき業界である。 【音楽業界からのGHG排出量の多い分野】 -観客の移動(全体の43%) -CDのライフサイクル(26%) -ライブ会場(機材や設備への電力など)(23%) 【移動に関わるGHG排出は大きな問題である】 ●観客の移動は、小さな会場になればなるほど公共交通機関を利用できる確率が高くなる(小規模会場に集まる観客の80%は公共交通機関を使用していると考えられる)。 ●自動車の利用している人の数は公共交通機関のそれより少ないと考えられるが、GHG排出量は大きくなる(車:2100万人、97.000トンCO2e;公共交通:4800万人、78.000トンCO2e) -アメリカの場合、特に車がないと行けない会場が多いため、出来るだけ多くの都市を周ることや人の集まりやすい会場を選ぶことがGHG排出量を減らすためのキーポイントになる。 ●ツアーやビジネスによる飛行機利用は環境負荷が大きい。特にチャーター機の使用は控えるべき。 【規模が大きければGHG排出量も増える】 ●レーベル、マネージメント、プロモーターなどスタッフ関係に関して、業界全体では数の少ない大企業が多数を占める小企業の排出量を上回る、もしくは割に合わない排出を行っている。 -4大メジャーレコード会社(EMI、ユニバーサル、ワーナー、BMG)が排出するGHG量は他の多数のインデペンデントレーベルが排出するそれよりも多い。レコード会社全体のGHG排出量のうちの78%が4大メジャーレーベル、22%がその他インデペンデントレーベルの排出量になる。 -大企業のある程度ポストのある人は、小規模会社と比べ国際出張の回数が格段に増えるため、飛行機による環境負荷が大きくなる。 -大抵上記のような人たちは飛行機でビジネスクラスを利用するが、ビジネスクラスはエコノミーの2倍、ファーストクラスはその10倍のGHGを排出している。 ●チケット1枚あたりで換算したGHG排出量を比較すると、大規模会場の方が排出量が多い。 -EUツアーが行われた場合、アリーナ級の場合チケット1枚あたり22kg、ホール級の場合は7kg。USツアーの場合はそれぞれ38kgと33kgになる。 【音楽配信によるGHG排出量は、CDショップでCDを売る場合やオンラインでCDを買う場合の半分以下である】 ●CDの生産から顧客に届くまでの過程でのGHG排出量が大きい。特にパッケージングに関わる行程でのGHG排出量が飛び抜けて多い。 ●上記の点をふまえると、CDの再イメージ化なしにGHG排出量の削減は難しい。 - 余談。日本にはない話だけど、米英は大手スーパーが売れ線のCDを特価で売り出しているため、スーパでのCD売上がCDショップのそれを上回っているとのこと。そのためCDショップはDVDやTシャツ、ゲームなど他の商品に力を入れざるを得なくなっている(こちらのCD屋は確かに日本と比べてCD売り場が狭い。グラスゴーの場合、特にHMVはCD売り場狭すぎ)。 ================================== 他にも特記すべきところはたくさんあるのですが、長くなってきたのでレポートからの抜粋はここまで。 幅広い観点から膨大な情報を細かく分析してあるレポートだと思います。こうゆう科学的な?本格的レポートは初めて読んだのですが、調査方法から定義から色々細かく書いてあって、全てが明確でとても分かりやすかったです。豊富なコラムや多くの現実的な提案もまた良し。 考えることが色々増えました。論文やレポートを読めば読むほど、見えてくる範囲が広がって本当に面白い。 もちろん、楽しいだけじゃ話にならないのですが。次の2、3年で全てが決まると言われている気候変動問題ですので。 スポンサーサイト
|
|
|